結論はパ・リーグはセ・リーグより強く、ソフトバンクは特に強い。
まず05年から始まった交流戦での19年までの通算成績は1094勝963敗でパ・リーグが大幅に勝ち越している。単年ごとに見てもセ・リーグが勝ち越したのは08年と09年の2年だけであることから明らかにパ・リーグよりセ・リーグが強いと言える数字である。下の表を見ると見事なまでに順位付されてしまっている。巨人が12球団中4位というのがリアルである。また短期決戦では実際の力は計り切れないのが常識ではあるが、05年以降の15回の日本シリーズでセ・リーグが日本一になったのは3回しかない。
次に05年から20年の各リーグの勝数と見てみたい。パ・リーグではソフトバンクが1255勝で2位の日本ハム1153勝と3位西武の1152勝を圧倒している。セ・リーグでは巨人が1211勝で1位。2位は1146勝で阪神、3位は1126勝で中日となっている。
②パ・リーグが強い1番の理由はフィジカル面。
20年の日本シリーズ後に各プロ野球OBが様々な解説や議論を行っているのだが「戦術」、「体質」、「DH制」、「根性論」、「精神論」、「ドラフト」に明確な根拠もなく終始する場面があまりにも多い。
また今回1番影響があったのは、ダルビッシュ有氏がYouTubeで言及した事でしょう。ダルビッシュ氏が入団して1年目の05年当時既にソフトバンクではウェイトトレーニングを本格的に行っており、主力選手は外部から自費でパーソナルトレーナーを雇いトレーニングを行っていたといいます。またサプリメントなどの栄養面でも当時から先進的であり、それを他球団の選手であるダルビッシュ氏にソフトバンクの山川周一コンディションニングコーチが情報共有するという寛大さがあり、そういったソフトバンク以外でも他球団との情報共有や交流が盛んなことがパ・リーグの球団が強い理由とも語っています。一方でセ・リーグは予告先発を行わないなど分かりやすいものを筆頭に球団間での情報共有や交流には閉鎖的だとも語っていました。
高木豊氏のYouTubeチャンネルでも、95年から06年まで横浜ベイスターズに在籍し、その後ソフトバンクに移籍した多村仁志氏も横浜ベイスターズには練習したら駄目、格好悪いという雰囲気があったが、ソフトバンクでは早朝から1日練習するのが普通で試合後も主力選手が練習するのが当たり前だったと語っています。またウェイトトレーニングなどフィジカルトレーニングも盛んで、ソフトバンクに移籍したから怪我が少なくなり現役を長く続けられと語っています。
ソフトバンクからは川崎宗則氏、井口資仁氏、城島健司氏と3人の選手がその後にメジャーに渡っています。最後の三冠王である松中信彦氏、小久保裕紀氏も有名ですね。
ソフトバンクは最近でも2010年から世界ランクのボディビルダーで、三菱重工長崎で杉内俊哉氏を指導したこともある高西文利氏をトレーニングアドバイザーとしてるのも有名である。
プロ野球で89年に最初にコンディショニングコーチとしてウェイトトレーニングなどに精通している立花龍司氏と契約したのがパ・リーグの近鉄バファローズでした。89年から93年まで野茂英雄氏や吉井理人氏を指導し、95年から96年まではロッテに在籍し、伊良部秀輝氏や小宮山悟氏を指導し、いずれもメジャーへ移籍し活躍しています。立花氏はその後もニューヨーク・メッツや楽天で指導しました。
日本の野球界ではまだまだウェイトトレーニングへの理解が進んでいません。まだまだ陸上部のように走り込みを重視する風潮があるのも現実です。
③ドラフトにとんでもないソフトバンクの強さの秘密が
結論はパ・リーグがセ・リーグよりドラフトで恵まれてる事実は無いが戦略がそこにはある。
一部で言われているドラフトが恵まれてる説だが、結果論でありパ・リーグで芽が出ていないアマチュアスター選手も沢山いる。これはやはり育成力に起因するのではないかとも思う。2011年以降でセパ球団がドラフト会議で競合した例は30回あり18回パ・リーグが交渉権を獲得してはいるもののほぼ半分と言っていい。またよく言われるパ・リーグに松坂大輔氏を筆頭にパワーピッチャーがドラフトで流れているというのも結果論である。当時松坂氏を指名したのは日本ハム、西武と横浜の3球団であるがセ・リーグでは横浜1球団のみである。しかもこれは当時あった逆指名制度を回避しての高校生指名である。またダルビッシュ有氏と大谷翔平氏は日本ハムの単独指名。則本昂大氏も楽天の2位単独指名。田中将大氏は横浜、オリックス、楽天と日本ハムの4球団競合だったが、ここでも横浜のみしかセ・リーグからは指名していない。これはパ・リーグが恵まれてるのではなく、パ・リーグには戦略がしっかりあると理解出来る。
一方でドラフト指名する選手の傾向はやはりあると思う。セ・リーグは即戦力になる大学生を好み、パ・リーグは伸びしろのある大学生を好むなんて言われている。また西武黄金期とその後のダイエー、ソフトバンクの躍進を支えてるのが根本陸夫氏と今でも言われている。そのGM的な役割、スカウトティング能力は誰もが認める所である。
またソフトバンクは過去10年間でのドラフト支配下選手指名は12球団最少の52選手だが、育成選手指名は12球団で圧倒的に多い59選手である。言葉を変えるとソフトバンクは安く青田買いした選手を上手く育成し、球団経営に活かしている。2番目に多い巨人も育成枠から躍進する選手がそれなりにいる印象だ。逆にいうとオリックスは支配下選手を12球団で1番多く指名し、育成選手も3番目に多い数指名しているが全く機能していない。
ソフトバンクは11年に3軍創設している。過去に広島や巨人で3軍というのはあったもののリハビリ組という要素が強く、3軍チームとして独立して対外試合などをし、育成に特化したのはソフトバンクが最初である。
④ソフトバンクの新規参入。各チームの球団改革。
ダイエーを買収しプロ野球界にソフトバンクが参入したのが05年からである。楽天も同じ年に新規参入してるが、ダイエーは親会社の経営状態が悪かっただけで、ダイエーホークスは03年日本一、04年もプレイオフで西武に破れはしたもののリーグ戦では1位である。つまりソフトバンクはリーグ二連覇中の球団を引き継いだわけだ。
また当時でこそ携帯電話のサービス開始前で知名度や企業力も突出してはいなかったソフトバンクだが、今や時価総額16兆円を超え、他11球団を全て足してもソフトバンクには敵わない。これはチーム力に直結しており、総年俸は毎年12球団トップであり、球団施設も明らかに恵まれている。ただ球団単体として独立採算性であり、直近2020年2月期決算でも売上高324億9,300万円、純利益5億3,700万円を叩き出しているので親会社が採算度外視で広告費などを投入しているわけでもない。
ソフトバンク以外にも04年に日本ハムが北海道に拠点を移し、新規参入の楽天も宮城県に拠点を置いた為、パ・リーグはセ・リーグに比べ地域密着型で球団改革に取り組んでいる球団が多いのも事実だろう。西武も親会社のスキャンダルが発覚したのが04年であり、他の球団とは経緯は違うのものの運営に外部の手が入っている。セ・リーグでも12年に横浜ベイスターズを買収したDeNAが年々強くなってるのは同じ事が言えると思う。
地方では遊ぶ場所やタニマチの数が限られるのも要因かもしれない。
⑤西武黄金期、ヤクルト黄金期、中日黄金期、ソフトバンク黄金期
近年のプロ野球には主に西武黄金期(82年〜94年)、野村・ヤクルト黄金期(90年〜98年)、落合・中日黄金期(04年〜11年)、ソフトバンク黄金期(09年〜)の4つがあると思っている。むしろこの球団に関わりが無いOB解説者は今プロ野球で何が起こってるか、何故ソフトバンクが強いのか分からないだろう。
広岡達朗氏と森祇晶氏率いる西武の強さは誰もが知る所だがここをスタートにするには理由がある。現代のプロ野球の強い血統はこの西武が中心だからである。ソフトバンクの工藤公康監督、秋山幸二前監督。西武の辻発彦監督。中日の前監督で落合中日黄金期を支えた森繁和氏も西武時代の選手である。他にも強いチームの主要コーチには必ず西武経験者がいる。
もう1つの系統は野村克也氏であろう。阪神矢野燿大監督、中日与田剛監督、ヤクルト高津臣吾監督、日本ハム栗山英樹監督、楽天石井一久監督と現役5人の監督が野村ヤクルト及び阪神経験者である。
ここで重要なのが外の血を入れてるかである。
04年以降で見ると、パ・リーグには33人の監督がいて他球団在籍経験者はその内30人である。外国人監督は4人。セ・リーグは31人の監督がいて他球団在籍経験者はその内17人である。外国人監督は2人。
やはりソフトバンクが強い要因の1つはV9経験者の王貞治氏を筆頭に、西武黄金時代経験者の秋山氏と工藤氏の存在は大きいだろう。工藤氏は巨人や横浜での経験もある。今年2位のロッテも井口資仁氏、伊東勤氏は他球団経験者。日本ハムは外国人監督のヒルマン氏、近鉄優勝経験者の梨田昌孝氏、栗山英樹氏と外部から召喚している。
一方でセ・リーグは巨人を筆頭に閉鎖的な印象を受ける。特に人気面を優先しコーチ経験の無い選手を監督に直接起用した場合は成績が悪い。
野村氏や落合氏はやはり戦略的に長けていたのだろう。本人達はパ・リーグ出身でもある。その野村・ヤクルト全盛の90年代はまだメジャーも含めフィジカルトレーニングが盛んではなく、戦略的に長ける野村氏が有利に立てた時代だろう。00年代に入った落合・中日はフィジカル面でパ・リーグが強くなり結果論ではあるがあの落合氏でも5回日本シリーズに出て1回しか勝てていない。あくまでも短期決戦ではあるが。
ダルビッシュ氏の言葉を借りると「ある一定のレベルをフィジカルが超えると技術ではどうにもならなくなる」とのこと。
高校野球とプロ野球、プロ野球とメジャーリーグを比べても明らかですね。
⑥逆指名制度とFA制度
逆指名制度、自由獲得枠制度、希望入団枠制度というのが93年から06年まであり、これが一部資金面に強い球団に有利に働いていたのは間違いない。パ・リーグよりむしろセ・リーグに有利に働いていたというのが普通の味方で、それによって入団後の育成面などを結果的に補っていたのかもしれない。
93年から導入されたFA制度だが、ソフトバンクの参入より、巨人や阪神への移籍が減ったのは勿論、ポスティングシステムを含め有力選手はメジャーへ移籍する事が増えた為、戦力の均衡という意味ではあまり影響しなくなった。
⑦DH制
一部で言われているいるが、メジャーリーグのア・リーグとナ・リーグで格差を言われていないのでDH制が理由というのは結果論であろう。しかし、20年の日本シリーズの様に全試合DH制というのは普段からDH制で戦いなれてるチームが選手的にも戦術的にも有利なのは明らかでしょう。
⑧解決策
1 フィジカル向上。トレーニング!栄養!休養!
2 パ・リーグ経験者、MLB経験者を雇う
3 セ・パ球団入れ替え。
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